年齢別! 人間ドックで受けた方がいい検査の ご紹介

一般的な項目が決まっている健康診断に対し、人間ドックは希望する検査をオプションとして追加することもできます。しかし、健康管理の意識が高い方でもご自分に適して検査内容を選ぶのは難しく感じるかもしれません。
こちらでは、30代・40代・50代・60代に分けて身体の異常の傾向を説明するとともに、人間ドックで選んでいただきたい検査をご紹介します。人間ドックで追加するオプションや注目する検査項目の判断基準としてご活用ください。

人間ドックの基礎検診

人間ドックの基礎検診には以下のような検査が含まれています。
希望する場合は、このほかの検査をオプションとして組み込むことも可能です。

  • 身体計測
  • 視力
  • 聴力
  • 呼吸機能
  • 心電図
  • 血液一般
  • 感染症(梅毒、B型肝炎、C型肝炎)
  • 肝機能
  • 腹部超音波(肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓)
  • 脂質
  • 耐糖能(血糖値、尿糖、HbA1c)
  • 尿酸
  • 腎機能
  • 上部消化管検査(胃カメラ、胃バリウム検査)
  • 下部消化管検査(便潜血検査、大腸カメラ)

30代は今の異常よりも未来の異常に備えて人間ドックを

30代は今の異常よりも未来の異常に備えて人間ドックを

30代で深刻な生活習慣病を発症する例はあまり多くありません。一方で、その後に生活習慣病を発症する要因は身体の中に潜在していることが多い年代です。
20代は特に意識せずに過ごしていた方も、30代では未来の異常に備えた人間ドックを検討しましょう。30代で重視すべき検査項目をご紹介します。

生活習慣病の兆しを調べる基礎検診

基礎検診で注目すべき項目は空腹時血糖値と血中脂質です。
血糖値の上昇によって起こる動脈硬化は、脳卒中や心筋梗塞といった重篤な病気につながります。どちらも、身体機能低下や麻痺、しいては死亡にいたることもある危険な病気です。
また空腹血糖値が100を超えると、耐糖能異常(体の血糖値のコントロールが不良な状況)が懸念されます。

胃の疾患の兆候を胃カメラでチェック

日本人の死因として上位に数えられている胃がんや食道がん。その兆候は30代から存在している可能性があります。

胃カメラ検査などで、がんのリスクとなる慢性胃炎やピロリ菌感染症の可能性の有無などをチェックしておくとよいでしょう。

お酒が好きなら超音波検査を

アルコールの過剰な摂取は肝臓にダメージを与えます。アルコールが与える肝臓・腎臓・すい臓などへの影響を把握するために、基礎検診の「r-GTP」という項目に注目してください。
r-GTPが100を超えている場合、アルコール起因の生活習慣病を警戒する必要があります。

お酒を毎日飲む方は、肝臓の状態を詳しくチェックする腹部超音波検査がおすすめです。

病気のリスクが他人事ではなくなる40代

40代になると、20代・30代の間に蓄積された生活習慣による身体のダメージが顕在化しはじめます。
糖尿病やがんといった病気のリスクを考えはじめるべき年代です。また、30代まで人間ドック未経験でも、40代ではじめて受ける方は少なくありません。進行中の身体の問題と、さらに年齢を重ねたときに起こりうる病気のリスクを考えて検査内容を選ぶ必要があります。
40代の方に重視していただきたい人間ドックの検査をご紹介しましょう。

腹部超音波検査は定期的に

腹部超音波検査では、脂肪肝や肝臓腫瘍、胆石、胆嚢ポリープといったさまざまな病気・疾患の有無が確認できます。こうした病気は、表面上は目立った症状がないことも多いだめ、油断せずにチェックが必要です。

40代以降は腹部超音波検査を習慣づけておくことをおすすめします。

高まる糖尿病リスクには警戒を怠らず

糖尿病のリスクは30代以上に高まっています。基礎検診では血圧や空腹時血糖値、血中脂質、r-GTPといった注目してください。30代から意識してきた方はその後もチェックの継続を、特に意識していなかった方は遅くとも40代からは警戒を強めたほうがよいでしょう。

日本人の死亡例が多い大腸がんをチェック

胃カメラによって胃や食道のがんをチェックすることは重要ですが、40代からは国内での死亡率が高い大腸がんの有無を確認することも求められます。
便潜血検査であれば、費用をそれほどかけず大腸のスクリーニングが可能です。

50代では死亡率の高い病気の発症も考えられる

50代はがんや心疾患、脳血管疾患での罹患率(病気になる人の割合)が高まります。また、身体の不具合を自覚されている方も多く、人間ドックも一般化する年代です。検査では、がん、心疾患、脳血管疾患に分類される病気を発見するものが選択されています。以下のような検査項目が50代の人間ドックで注目されているようです。

脳卒中・心筋梗塞を早期発見するために

50代では動脈硬化による脳卒中・心筋梗塞が懸念されます。血圧や血糖値や肝機能値、血中脂質など動脈硬化に関連する値には注目してください。
これらの値が高い状態を放置すると、手遅れになってしまうこともあります。

転移しやすい前立腺がんを見逃さないために

前立腺がんは成長の遅さから初期症状が出にくいにもかかわらず、十分に成長してしまうと転移しやすいという危険な性質を有しています。症状があらわれてから調べると、すでに転移が広がっているケースもありますので早期発見による対処が大切です。

まずは腫瘍マーカー(PSA)による定期的なチェックをしましょう。

不整脈に早期対応するため心臓まわりの検査を強化

50代になると注意する必要がある病気が、心臓の病気です。わずかな不整脈が狭心症や心筋梗塞といった深刻な心臓の病気に発展することもあります。

心電図で要精密検査と言われた方は循環器内科を受診し、一日中心電図を行うホルター型心電図検査や、負荷心電図検査といった心臓まわりの検査を行い、小さな病気の可能性も見逃さないようにしましょう。

全身の定期的な検査が求められる60代

60代はあらゆる病気のリスクがピークに達する年代です。特にがんの罹患率は高く、60代を境に上昇を続けます。その後の健康を維持するため、人間ドックが本格的に求められる年代と言えるでしょう。加えて、検査内容は精密なものを選ぶ必要があります。
こうした60代の特徴に着目した、重視すべき人間ドックの検査項目をご紹介します。

肺がん発見のため胸部CT検査を

喫煙者が減少している事実に反して、肺がん罹患者の数は少しずつ増加しているようです。過去に喫煙歴がない方でも発症を警戒すべきかもしれません。特に男性は、肺がんの発症率が高いと考えられています。

肺がんを早期発見するためには、胸部CT検査が有効です。消化器系のほかのがんを発見するX線検査と併せて受けるようにしましょう。

基礎検診のチェック項目は広範囲

60代がチェックしなければならない基礎検診のチェック項目は、50代以上に増えます。50代でも警戒すべき糖尿病はもちろん、がんや心疾患も発見するため多くの項目をチェック対象にしてください。

代表的な項目としては、血圧や血糖値、肝機能値、血中脂質、安静時心電図などが挙げられます。

全身スクリーニング検査の必要性

あらゆる病気に対して警戒が必要な60代では、「ここさえ検査しておけば安心」という特定の部位はありません。反対に言えば、あらゆる部位がチェック対象になります。
胃カメラや大腸カメラ、CT検査など全身のスクリーニング検査も検討しましょう。比較的費用がかかりますが、身体をくまなく調べることで隠れている異常が見つかることもあります。

全身スクリーニング検査の必要性

60代になり一気にリスクが高まる大腸がんやその予備軍のポリープをを早期発見するためには大腸カメラがおすすめです。
大腸カメラで大腸ポリープが見つかった方は、大腸カメラでポリープが切除できます(内視鏡下ポリープ切除術)。ポリープを切除することで、大腸がんのリスクが低下することがわかっておりますので、一度も大腸カメラを行ったことがない方は、早めに大腸カメラを行うことをお勧めします。

監修医紹介

加藤 貴志 院長(かとう たかし/Takashi Kato)

咳(せき)の検査・診断 担当医 加藤 貴志 院長 (かとう たかし/Takashi Kato)

経歴

1998年自治医科大学卒業
2007年東北大学大学院医学博士課程修了、東北大学病院移植・再建・内視鏡外科 他
2016年〜現職

備考

医学博士 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会 日本内視鏡外科学会 日本臨床外科学会 日本再生医療学会 日本抗加齢医学会 総合診療認定医